非認知能力の地図 / はじめての方へ

非認知能力とは?

挑戦する意欲、工夫して試す粘り強さ、気持ちを整え、人と協力する力。こうした、学びや生活を支える力が「非認知能力」です。

親子で積み木を楽しむ様子

01 まず、ひとことで

学ぶ意欲や、気持ち、人との関わりを支える力。

意欲、粘り強さ、気持ちを整える力、協力する力。
こうした力をまとめて「非認知能力」と呼びます。

「やってみたい!」

興味を持って、動き出す

「悔しい。でも…」

気持ちを整え、次を選ぶ

「一緒にやろう」

自分の思いを伝え、相談する

テストの点数だけでは見えにくい、子どもの育ちの一面です。

02 例えば、いつもの積み木遊び

崩れた、そのあとにも育つ力がある。

高いおうちを作りたい!

やってみる

自分から遊びを始める。

あっ、崩れちゃった…

気持ちを整える

悔しい気持ちを受け止めてもらう。

ここ、持っていてくれる?

助けを借りて、試す

一人で難しければ、人と一緒に。

完成したかだけでなく、取り組む途中にも目を向けます。

休む、別の遊びに変えるのも選択肢。無理に続けさせる必要はありません。

03 認知能力との違い

「考える力」と「取り組む力」。どちらも使う。

認知能力

わかる・覚える・考える

形を見分ける。数を数える。
倒れない積み方を考える。

「大きい積み木を下にしよう」
+

非認知能力

意欲・気持ち・人との関わり

作りたいと思う。悔しさを整える。
友達と役割を相談する。

「一緒に、もう一回やってみよう」

知っていることを使いながら、試し、学んでいく。

実際の行動には複数の力が関わります。図は、違いをつかむための例です。

「点数で測れない力」なの?

学力テストだけでは捉えにくいものですが、研究では観察や質問紙などでも調べています。「まったく測れない」という意味ではありません。

04 だから、今も将来も大切

学力だけでは説明できない、将来とのつながり。

子どもを大人になるまで追った研究でも、
自己制御や、幼児期の育ちが注目されています。

研究① / ダックワースとセリグマン(2005)

IQの高さだけでなく、
日々の「取り組み方」も成績に関わる。

秋に調べた「IQ」と「自己規律」。同じ生徒たちの学年末の成績と比べると、自己規律のほうが、成績と強く結びついていました。

米国・第8学年の生徒164人を追跡

その後の成績と、より強く結びついていたのは?

秋の測定 → 学年末の学校の成績と比較

秋に調べたこと

IQ

知能検査で測った、
考えたり問題を解いたりする力

分かったこと成績と関連があった

秋に調べたこと

自己規律

目先の誘惑を抑え、
必要なことに取り組む傾向

分かったこと成績との関連は、
IQより強かった
研究結果の要点を示した比較図です。成績が何点上がるかを表した図ではありません。原著の要旨を見る ↗

「理解できるか」だけでなく、
「日々どう取り組むか」にも目を向ける。

この研究は、IQが成績に関係ないという結果ではありません。また、自己規律を鍛えれば成績が上がる、と確かめた実験でもありません。米国の第8学年の結果で、幼児や将来の年収にそのまま当てはめることはできません。

「2倍以上」の意味・調べ方・グリットとの違い

最初の調査は第8学年140人、IQ測定を加えた追試は164人。自己規律は本人・保護者・教師の回答などで測定しました。生徒によって成績が違うことを、秋に測った自己規律とIQがそれぞれどれだけ説明できるかを統計的に比べました。自己規律で説明できた割合は、IQの2倍以上でした。「成績が2倍になる」「2倍正確に予測できる」という意味ではありません。図では、この専門的な数値を棒の長さに置き換えず、関連の比較として示しています。掲載学会の原著要旨を確認しています。

Duckworth & Seligman(2005):自己規律と学業成績

ダックワースらの「グリット」の研究(2007)は別の研究です。長期的な目標への情熱と粘り強さが、大学の成績、士官学校での訓練継続、綴り字大会の順位などと関連しました。成果の個人差を説明した割合は平均約4%で、成功のすべてを決めるという結果ではありません。グリット研究の原著要旨

研究② / 子どもを32歳まで追跡

子どもの頃の自己制御が、成人後の生活と関連。

子ども時代 · 3〜11歳

自己制御を測る

衝動を抑える、注意を向けるなど、
気持ちや行動を調整する力を調査。

同じ人たちを32歳まで追跡

成人後 · 32歳

自己制御が高かった人ほど

  • 健康健康上の問題が少ない傾向
  • 所得所得が高い傾向
  • 家計家計管理の問題が少ない傾向
IQや子ども時代の家庭の社会経済状況を考慮しても、関連が残りました。
関連を調べた研究です。「自己制御を高めれば必ず年収が上がる」という因果関係を示すものではありません。
研究の対象と出典

ニュージーランドのダニーデン研究。出生時1,037人の集団を追跡し、3・5・7・9・11歳の自己制御と32歳の生活を分析。非認知能力すべてを測った研究ではありません。Moffittら(2011)、Table 1

研究③ / 幼児教育の、その後

幼児教育を受けた群に、40歳でも違いが見られた。

米国のペリー研究では、幼児教育と家庭訪問を受けた群と、受けなかった群を比較しました。

幼児期の教育後IQは上昇

ただし、IQの差は
長期には続かなかった

それでも、40歳では就業・所得に差

教育を受けた群で
良好な結果が見られた

ペリー就学前教育研究の流れ。IQだけでは説明できない、幼児教育の長期的な効果がありました。

将来の仕事や年収につながるのは、テストで測れる力だけではありません。下のグラフは、教育を受けた群と受けなかった群の、40歳時点の比較です。

40歳で働いていた割合

教育プログラムあり76%、なし62%。差は14ポイント。
差は14ポイント

40歳で年間2万ドル以上を稼いだ割合

教育プログラムあり60%、なし40%。差は20ポイント。
差は20ポイント

幼児教育プログラム全体の結果です。非認知能力だけを高めた効果や、家庭の遊びの効果を示すものではありません。

グラフの出典・対象・読み方

1960年代の米国。低所得世帯で学校生活につまずくリスクが高いと評価されたアフリカ系の子ども123人(教育あり58人、なし65人)を追跡。3〜4歳の教育と家庭訪問を含む取り組みで、日本のすべての家庭に同じ差が当てはまるわけではありません。

HighScopeの40歳報告概要、本文p.1とFigure 1(p.2)の割合を再作図。両図とも横軸0〜100%。原報告書

この研究で注目されたこと

IQの上昇だけでは、長期的な効果を説明できなかった。

ヘックマンらは、行動面などの変化が成人後の就業・所得などの成果の一部を説明すると分析しました。これは「認知能力が年収に影響しない」という意味ではありません。

「勉強以外の育ちにも意味がある」と考える根拠です。

再分析の原著論文(2013)

目を向けたいのは、学力と、学びや暮らしを支える力。

認知能力も大切です。ダニーデン研究ではIQも所得と関連しており、非認知能力だけで成功が決まるとは言えません。

05 家庭でできること

教え込む前に、試せる・頼れる場面をつくる。

積み木が崩れたときなら、こんな関わりから。

気持ちを受け止める

「崩れて、悔しかったね」

すぐに励ます前に、今の気持ちを聞く。

選べるようにする

「もう一回? 少し休む?」

大人が答えを決めず、本人と考える。

必要なところを手伝う

「どこを持っていようか?」

全部代わる前に、ほしい助けを確かめる。

一人でできたかだけでなく、自分で選び、人を頼れたことにも目を向けて。

家庭向けに考えた例です。毎回うまくできなくても、その日の親子に合う形で試せます。

06 わが子の今から、選んでみる

気になる力から、遊びや声かけを探そう

「自分で選べるようになってほしい」「友達と遊ぶときが気になる」。今知りたいことに近い力を選ぶと、家庭での関わりや遊びを読めます。

  1. 01 自己理解

    好き・苦手・必要な助けに気づく。

    自己理解の記事を読む →
  2. 02 自己肯定感

    苦手や失敗があっても、自分を大切に思う。

    自己肯定感の記事を読む →
  3. 03 感情調整

    気持ちに気づき、自分に合う整え方を探す。

    感情調整の記事を読む →
  4. 04 自己制御

    一呼吸おいて、目的に合う行動を選ぶ。

    自己制御の記事を読む →
  5. 05 好奇心

    気になることを見つけ、確かめてみる。

    好奇心の記事を読む →
  6. 06 創造性

    別の見方や、自分なりの表し方を楽しむ。

    創造性の記事を読む →
  7. 07 意思決定

    方法と影響を考え、選んで試し直す。

    意思決定の記事を読む →
  8. 08 粘り強さ

    難しいときに工夫や支援を探して取り組む。

    粘り強さの記事を読む →
  9. 09 共感

    相手の立場を想像し、本人に確かめる。

    共感の記事を読む →
  10. 10 協働

    希望を伝え合い、役割や方法を相談する。

    協働の記事を読む →

自己肯定感など、関連する言葉の違いを知る →

10のテーマは記事を探すための整理です。研究で唯一決まった分類や、子どもを採点する項目ではありません。