父親の子育ての影響は?非認知能力との関係と研究で分かること
この記事でわかること
日本の大規模な追跡調査では、乳幼児期に父親がよく育児に関わった家庭の子どもは、のちにがまんや集中、約束を守ることなどの行動の問題が少ない傾向がありました。ただし関わったから伸びたという因果は確かめられておらず、父親でなければならない根拠もなく、子どもへの気持ちを込めたやりとりと、家族の負担を分け合うことが大切だと考えられます。
この記事の目次
父親の子育てと子どもの非認知能力:研究で分かること
厚生労働省の21世紀出生児縦断調査では、1歳6か月のときに休日に父親と過ごす時間が長かった子ほど、5歳6か月で「がまんすること」「約束を守ること」などが「できる」と答えた割合が高くなっていました出典: 厚生労働省 21世紀出生児縦断調査。
休日に父親と過ごす時間(1歳6か月)と、5歳6か月で「できる」と答えた割合
| 子どもの行動 | 1時間未満 | 6時間以上 |
|---|---|---|
| がまんすること | 66.8% | 75.5% |
| 落ち着いて話を聞くこと | 76.7% | 82.0% |
| 感情をうまく表すこと | 71.0% | 76.3% |
| 約束を守ること | 74.6% | 79.9% |
| 集団で行動すること | 88.4% | 93.0% |
単純な集計で、家庭の収入などの違いは調整していません。同じ調査で父親の休日の過ごし方別に見ると、「仕事」の家庭の子も「家族と過ごす」家庭の子と同じくらい高く、ほかの要因が混ざっている可能性があります。出典: 厚生労働省 21世紀出生児縦断調査
同じ調査の約2万8千人を、親の学歴や収入、母親の育児への関わり、子どもの気質などをそろえて分析した研究では、1歳6か月で父親が平日に2時間以上育児をしていた家庭の子は、5歳6か月で行動の問題がある割合が低い傾向でした(男の子のオッズ比0.70、女の子0.81)出典: Ochi・Fujiwara 2021。
父親の子育てと子どもの育ちを調べた日本の研究
| 研究 | 対象 | 分かったこと | 限界 |
|---|---|---|---|
| 21世紀出生児縦断調査の分析(2021年) | 約2万8千人 | 1歳6か月の父親の育児が多いと、5歳6か月のがまん・集中・約束などの問題が少ない傾向 | 父親の関わりも子どもの行動も母親が回答 |
| エコチル調査の分析(2024年) | 約2万8千人 | 生後6か月の父親の関わりが多いと、3歳の発達の遅れの可能性が低い傾向。一部は母親の育児ストレスが減ることを通していた | 観察研究 |
| 21世紀出生児縦断調査の分析(2023年) | 約1万8千人 | 生後6か月の父親の関わりが多いと、16歳で心の健康が低い割合が少し低い | ふたり親で、父親がフルタイムの家庭に限る |
どの研究も「非認知能力」そのものを測ったわけではなく、がまん・集中・約束などの行動や、発達の目安、心の健康を測っています。出典: Ochi・Fujiwara 2021 出典: Kato ほか 2024 出典: Kato ほか 2023
海外の追跡研究24本をまとめた系統的レビューでも、22本が父親の関わりと子どもの社会面・行動面・心理面の良い結果との関係を報告していました。はっきり言えるのは、父親が子どもと直接やりとりすることの良さでした出典: Sarkadi ほか 2008。
どの研究も観察研究で、父親が関わったから子どもが伸びたという因果は確かめられていません。著者たちも、夫婦の関係や父親の心の健康などの影響が残っている可能性を書いています出典: Ochi・Fujiwara 2021。
父親の子育てでなければならない?研究から言えること
研究者のまとめでは、父親の子育てと母親の子育てを別のものと考える十分な根拠はなく、父親の関わりが子どもに与える影響は母親のものと似ているとされています出典: Fagan ほか 2014。男性の親2人、女性の親2人、男女の親の家庭を思春期まで追った研究でも、子どもの育ちを左右していたのは家族の形ではなく、子育ての質と親の心の健康でした出典: McConnachie ほか 2021。
よく言われることと、研究で分かること
| よく言われること | 研究で分かること |
|---|---|
| 父親にしかできない役割がある | 父親と母親の子育てを別のものとする根拠は乏しい。家族の形より子育ての質が大切 |
| 父親と遊ぶと、たくましさや社会性が育つ | 父親との体を使う遊びと、子どもの社会性や自己制御の関係は、弱い〜中くらい。測り方がばらばら |
| とにかく時間を長く関わればよい | 英国の研究では、育児の回数より、子どもへの気持ちの込め方や親としての安心感が子どもの育ちと関係していた |
| 父親が関わると、母親を通しても子どもに良い | 父親の関わりが多い家庭では母親の育児ストレスが少なく、それが子どもの発達の一部を説明していた |
出典: Fagan ほか 2014 出典: StGeorge・Freeman 2017 出典: Opondo ほか 2016 出典: Kato ほか 2024
日本の研究の多くは、両親がそろい父親がフルタイムで働く家庭を調べています出典: Kato ほか 2023。ひとり親の家庭や、父親がいない家庭の子が育ちにくいという意味ではありません。子どもにとって大切なのは、気持ちを向けてくれる大人がいることと、育てる大人の負担が一人に偏らないことだと考えられます。
父親の子育ての今:家事・育児の時間と育休
6歳未満の子がいる家庭の1日の家事・育児の時間は、夫が少しずつ増えていますが、妻との差はまだ大きいです出典: 総務省 社会生活基本調査 2021。
6歳未満の子がいる夫と妻の1日の家事・育児の時間(週全体の平均)
| 夫 | 妻 | |
|---|---|---|
| 家事関連の合計(2021年) | 1時間54分 | 7時間28分 |
| うち育児 | 1時間05分 | 3時間54分 |
| うち家事 | 30分 | 2時間58分 |
| 家事関連の合計(2001年) | 48分 | 7時間41分 |
男性の育児休業の取得率は、令和7年度の調査で50.9%と、前の年の40.5%から上がりました出典: 厚生労働省 雇用均等基本調査 令和7年度。ただし取得率は、何日休んだかを表しません。子どもが生まれて8週間以内に最大4週間まで取れる「産後パパ育休」もあります出典: 厚生労働省 イクメンプロジェクト。
毎日の子育てで、父親ができること
- 子どもと直接やりとりする時間をつくる。家の中で一緒に遊ぶ、外に連れ出す出典: Sarkadi ほか 2008出典: Ochi・Fujiwara 2021
- 回数より、子どもの気持ちに応えること。泣いたときや困ったときに、自分も応えられる親だと思えるようにする出典: Opondo ほか 2016
- 食事、おむつ、お風呂、寝かしつけを、手伝いではなく担当として分け合う出典: Ochi・Fujiwara 2021
- 母親の負担を減らすことも、子どもの育ちにつながりうる出典: Kato ほか 2024
父親の子育てと心の不調:産後うつは父親にも
子どもが生まれる前後のうつは、母親だけでなく父親にもあります。43の研究をまとめた分析では、妊娠中から産後1年の父親の約10%にうつが見られ、産後3〜6か月にはさらに多くなっていました出典: Paulson・Bazemore 2010。より多くの研究をまとめた分析では約8%でした出典: Cameron ほか 2016。
父親の心の不調について分かっていること
| 研究 | 分かったこと |
|---|---|
| 海外の43研究のまとめ(2010年) | 妊娠中から産後1年の父親の約10%にうつ |
| 日本の国民生活基礎調査の分析(2020年) | 産後1年以内に、心の苦しさの目安(K6)が9点以上だった父親は11.0%、母親は10.8% |
| 英国の追跡研究(2005年) | 父親の産後うつは、3歳半の子どもの情緒や行動の問題と関係していた |
| 英国の追跡研究(2015年) | その関係の約3分の2は、母親のうつと夫婦の対立を通していた |
日本の11.0%は、うつ病の診断ではなく、心の苦しさの程度を測る質問の結果です。出典: Paulson・Bazemore 2010 出典: Takehara ほか 2020 出典: Ramchandani ほか 2005 出典: Gutierrez-Galve ほか 2015
日本の分析では、父親の長時間労働(週55時間以上)が、両親がそろって心の苦しさを抱えることと関係していました出典: Takehara ほか 2020。眠れない、何をしても楽しくない、いらいらが続くといった状態があるときは、一人で抱えずに、かかりつけ医や自治体の子育ての相談窓口に相談してください。
この記事について
この記事は一般的な情報で、個別の診断の代わりにはなりません。
父親の子育てのよくある質問
父親が子育てに関わると、子どもの非認知能力は伸びますか?
日本の調査では、乳幼児期に父親がよく関わった家庭の子は、がまんや集中、約束などの行動の問題が少ない傾向がありました出典: Ochi・Fujiwara 2021。ただし観察研究で、関わったから伸びたという因果は確かめられていません。
父親がいない家庭の子どもは、育ちにくいですか?
そうとは言えません。家族の形より、子育ての質と親の心の健康が子どもの育ちを左右していたという研究があります出典: McConnachie ほか 2021出典: Fagan ほか 2014。気持ちを向けてくれる大人がいることが大切だと考えられます。
父親は子どもと何時間くらい関わればいいですか?
研究で決まった時間はありません。日本の研究では平日2時間以上の育児で関係が見られましたが出典: Ochi・Fujiwara 2021、英国の研究では回数より子どもの気持ちに応えることの方が関係していました出典: Opondo ほか 2016。
育休をとれば、子どもの発達に良いですか?
育休そのものの効果を確かめた研究は見つかりませんでした。日本の研究では、父親の育休は母親の子育ての負担の軽減と関係しなかったという報告があり、休む期間が短いことが理由と考えられています出典: 厚生労働科学研究 令和4年度。
参考にした資料
日本の研究は厚生労働省の21世紀出生児縦断調査とエコチル調査を使った論文、海外は追跡研究の系統的レビューとメタ分析、家事・育児時間と育休は総務省と厚生労働省の統計で確かめました。体験談や宣伝のページは根拠にしていません。
資料の一覧と、参考にした内容
- 厚生労働省「21世紀出生児縦断調査(特別報告)結果の概況 2001年ベビーの軌跡(未就学編)」
2026-10-14、担当が本文を確認。3(3)父と子ども。数字は図25・図26の表(調査役)。単純集計。
- Ochi M, Fujiwara T(2021)Paternal childcare in early childhood and problematic behavior in children: a population-based prospective study in Japan. BMC Pediatrics 21:397
2026-10-14、担当が要旨を確認。27,870人、オッズ比と限界は本文(調査役)。
- Kato T ほか(2024)Paternal involvement in infant care and developmental milestone outcomes at age 3 years: the Japan Environment and Children's Study (JECS). Pediatric Research 95(3):785-791
2026-10-14、担当が要旨を確認。母親の育児ストレスを通す経路。
- Kato T ほか(2023)The long-term association between paternal involvement in infant care and children's psychological well-being at age 16 years. Journal of Affective Disorders 324:114-120
2026-10-14確認(調査役、要旨と成育医療研究センターの資料)。ふたり親・フルタイムの父親。
- 厚生労働科学研究費補助金 令和4年度 分担研究報告書(加藤承彦)
2026-10-14確認(調査役)。父親の育休取得は母親の子育て負担の軽減と関連しない(休業期間の短さと推察)。
- Sarkadi A ほか(2008)Fathers' involvement and children's developmental outcomes: a systematic review of longitudinal studies. Acta Paediatrica 97(2):153-158
2026-10-14、担当が要旨を確認。24本中22本が良い影響、16本は社会経済的地位を調整。
- StGeorge J, Freeman E(2017)Measurement of father-child rough-and-tumble play and its relations to child behavior. Infant Mental Health Journal 38(6):709-725
2026-10-14確認(調査役、要旨)。関係は弱い〜中くらい、測り方がばらばら。
- Opondo C ほか(2016)Father involvement in early child-rearing and behavioural outcomes in their pre-adolescent children: evidence from the ALSPAC UK birth cohort. BMJ Open 6:e012034
2026-10-14確認(調査役、要旨)。情緒的な反応と親としての安心感が関係、育児の量は関係しない。
- Fagan J, Day R, Lamb ME, Cabrera NJ(2014)Should researchers conceptualize differently the dimensions of parenting for fathers and mothers? Journal of Family Theory & Review 6(4):390-405
2026-10-14確認(調査役、要旨)。父と母の子育てを別の概念とする根拠は乏しい。
- McConnachie AL ほか(2021)Adoptive gay father families: a longitudinal study of children's adjustment at early adolescence. Child Development 92(1):425-443
2026-10-14確認(調査役、要旨)。家族の型の違いは少なく、子育ての質と親の心の健康が子どもの適応を予測。
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の要約」
2026-10-14、担当が表を確認。6歳未満の子がいる夫婦と子の世帯、週全体。
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」事業所調査 結果概要
2026-10-14、担当が PDF p.4 を確認。男性の育児休業取得率50.9%(前回40.5%)。
- 厚生労働省 イクメンプロジェクト「育児休業制度とは」
2026-10-14確認(調査役)。産後パパ育休は出生後8週以内に4週まで、2回に分けられる。
- Paulson JF, Bazemore SD(2010)Prenatal and postpartum depression in fathers and its association with maternal depression: a meta-analysis. JAMA 303(19):1961-1969
2026-10-14、担当が要旨を確認。10.4%、産後3〜6か月に多い。
- Cameron EE ほか(2016)Prevalence of paternal depression in pregnancy and the postpartum: an updated meta-analysis. Journal of Affective Disorders 206:189-203
2026-10-14確認(調査役、要旨)。74研究で8.4%。
- Takehara K, Suto M, Kato T(2020)Parental psychological distress in the postnatal period in Japan: a population-based analysis of a national cross-sectional survey. Scientific Reports 10:13770
2026-10-14確認(調査役、全文)。K6 9点以上 父11.0%・母10.8%、週55時間以上の労働。
- Ramchandani P ほか(2005)Paternal depression in the postnatal period and child development: a prospective population study. Lancet 365:2201-2205
2026-10-14確認(調査役、要旨)。3.5歳の情緒・行動の問題と関係。
- Gutierrez-Galve L ほか(2015)Paternal depression in the postnatal period and child development: mediators and moderators. Pediatrics 135(2):e339-e347
2026-10-14確認(調査役、要旨)。約3分の2は母親のうつと夫婦の対立を通す。

